大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成10年(ワ)21228号 判決

原告

株式会社ライフ

右代表者代表取締役

渡邉秀明

右訴訟代理人弁護士

村田英幸

被告

松沢操

右訴訟代理人弁護士

村本政彦

主文

一  本件につき東京簡易裁判所平成一〇年(ロ)第六七〇九八号立替金請求事件の仮執行宣言付支払督促を認可する。

二  督促異議申立て後の訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

主文同旨

二  請求の趣旨に対する答弁

1  主文掲記の仮執行宣言付支払督促を取り消す。

2  原告の請求を棄却する。

3  訴訟費用は原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、割賦購入あっせん等を業とする株式会社である。

2  原告は、平成九年八月一六日、被告との間で、次の約定で立替払契約(以下「本件立替払契約」という)を締結した。

(一) 原告は、被告が平成九年八月一六日、加盟店であるエグザスダイブカレッジ大森から購入したダイビング器材の代金七七万円を立替払いする。

(二) 被告は、原告に対し、右立替払した七七万円及び手数料金二三万一〇〇〇円を平成一〇年一月二七日から平成一二年一二月二七日まで毎月二七日限り二万四四〇〇円宛、分割して原告方へ持参または送金の方法で支払う。

ただし、初回の支払は二万七〇〇〇円とし、右期間のうち平成一〇年七月から、毎年、七月と一二月には、それぞれ二万円加算するものとする。

(三) 被告が、右割賦金の支払を怠り、原告から二〇日以上の相当な期間を定めた催告をされたにもかかわらずその支払をしないときは、期限の利益を喪失する。

遅延損害金は、年六パーセントの割合とする。

3  原告は、平成九年九月一五日、エグザスダイブカレッジ大森に対し、前記立替払い金を支払った。

4  被告は、前記手数料のうち五万二五三九円を支払ったが、その余の支払を怠った。

5  原告は、被告に対し、平成一〇年六月一三日到達の書面で支払期の経過した割賦金を二〇日以内に支払うよう催告した。

6  よって、原告は、被告に対し、右立替金七七万円及び手数料の残額合計九四万八四六一円及びこれに対する平成一〇年七月四日から支払済みまで年六パーセントの割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  請求の原因に対する認否

請求原因事実はすべて認める。

三  被告の主張(利息制限法の適用ないし類推適用)

本件は立替払契約に基づく割賦金の請求であるが、右割賦金のうち本件契約による立替金に加算された割賦購入あっせんの手数料(以下「本件手数料」という)には、報酬の他、消費貸借上の利息に該当する部分が含まれているから、これにそのまま原告主張の遅延損害金をも併せて請求することは、将来の利息分について重利計算を認めることになって不相当である。

したがって、利息制限法の適用あるいは類推適用により、被告が期限の利益を失った日の翌日から分割払いの最終期限までの未経過利息については、残金を一括請求する以上これを控除すべきである。

また、手数料中の利息に該当する部分の確定はできないし、本件立替払契約は実質的に消費貸借に極めて類似した性質を有しているのであるから、未経過利息分の計算に当たっては手数料全額が利息に該当するとして計算控除されるべきである。

また、立替払契約の実態から見る限り、信販会社は無料で販売店に契約手続を代行させ、逆に販売店から手数料さえ取っている場合があるのであり、立替払契約そのものにどれだけ固有の諸経費がかかっているか疑わしく、手数料の実体は純然たる利息というべき報酬である。

四  被告の主張に対する原告の反論

本件手数料は、立替払契約に対する報酬、諸経費等であり、純然たる利息ではないから、利息制限法を適用あるいは類推適用する余地はない。

また、割賦販売法では、強行規定として遅延損害金を年六パーセントとして上限を設けており、その代わりに手数料については特に制限を設けず、自由に定めることができるとしているものである。

理由

一  請求原因事実は、当事者間に争いがない。

二  被告は、本件立替払契約は実質的に消費貸借に極めて類似した性質を有する契約であるから、本件手数料については、利息制限法の適用あるいは類推適用を受けるべきであると主張するので検討する。

前記争いのない事実と弁論の全趣旨によれば、本件立替払契約は、割賦購入あっせん等の業者である原告が、提携した販売店であるエグザスダイブカレッジ大森から被告がダイビング器材を購入する際に、右購入代金を一括して販売店に支払い、その後、被告が原告に対し、右購入代金相当額に本件手数料を加算した額を割賦で返済することを内容とするもので、原告と販売店間の契約及び被告と販売店間のダイビング器材の売買契約と一体をなすものであり、ダイビング器材の購入者である被告から見ると、経済的には原告から購入代金の融資を受けるという金融の手段としての面を有することは否定できない。そして、金融による対価という側面からすると、本件手数料に利息に類する部分が含まれうるというべきである。

しかし、本件手数料は、一方で、立替払いに対する報酬、諸経費等を含むというべきであり、また、割賦販売法三〇条の三第二項により、割賦購入あっせんに係わる各回ごとの支払義務が履行されない場合の遅延損害金については法定利率(年六パーセント)を超えることができないと制限されていることも衡量すると、本件立替払契約については、利息制限法の適用あるいは類推適用の余地はないと解すべきである。

三  以上の次第で、原告の被告に対する本訴件請求は理由があるからこれを認容すべきところ、これと符合する主文一項掲記の仮執行宣言付支払督促は相当であるからこれを認可することとし、督促異議申立て後の訴訟費用の負担につき、民訴法六一条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官西岡清一郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例